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2018.04.23

日本の最古の入れ歯

我が国の入れ歯の歴史はヨーロッパより200年も早く、16世紀半ばには「噛める総入れ歯」が実用化していました。
ツゲの木などを彫刻して仕上げた「木入れ歯」です。

現存している日本最古の総入れ歯は、和歌山市の願成寺を開山した中岡テイ、通称“仏姫”と呼ばれる女性のもので、
1538(天文7)年に76歳で死去していますので、すでにこの時代には入れ歯が普及していたことがうかがわれます。
ちなみに、この入れ歯はX線解析と赤外線分析でお歯黒が施されていたことが判明しています。
この職人芸的な「木入れ歯」は、明治時代まで用いられます。最初は仏師の片手間の仕事から始まりましたが、
江戸時代には「入れ歯師」と呼ばれる専門職業として定着しました。

 

 

 

材料はツゲが一番とされ、中でも伊豆七島のホンツゲが最高級品とされていました。
ツゲは、材質が強く割れにくく、彫刻し易く肌ざわりも良い為、入れ歯の材料に適していたようです。
日本の木床義歯は、食事をしても落ちないように、歯がない上顎の粘膜に吸いつき保持するようにできており、
現在の総入れ歯が顎に吸着する理論と同じです。
まさに、世界に類のない「木の文化」と日本人の手先の器用さによる「独自の木彫技術」といえるでしょう。

 

 

江戸中期の国学者・本居宣長は、手紙の中で「先頃は入歯御世話に在候。参候而模(かた)を取帰候。
又廿日ごろ、今一度参り、あら作りを当テ見申候而其上歯を植申候由申候。(後略)」と記しています。
入れ歯師が自宅まで来たのでしょう。あごの型を採って持ち帰り、もう一度仮合せをし、調整は、食紅を用い、
当たって痛いところを少しづつ削り、精巧に仕上ていく過程は、現代とそれほど変わっていません。

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